中学校2年生に薦めたい本100冊vol.6 9月

凝縮された文学の宇宙~珠玉の短編小説集

長編小説には
長編小説の魅力がありますが、
短編には
短編のおもしろさがあります。
長編に負けず劣らず大きな文学世界が、
ギュッと凝縮されているのですから。
古今東西の短編集から
8冊をセレクトしました。

その1
「ボッコちゃん」(星新一)

ある富豪の飼っているペットは、
15歳の混血の少女。
言葉など人間には不要。
そう信じる彼は、
生まれたての赤ん坊をもらい受け、
言葉を一切教えず、
大切に育てあげた。
ある日、富豪が交通事故で命を失うと、
少女は…。
(「月の光」)

その2
「さがしもの」(角田光代)

14歳の「私」は、
病床のおばあちゃんから
一冊の本を探すように言われる。
書名も著者名も
聞いたことのない本を。
「その本を見つけてくれなきゃ、
死ぬに死ねない」。
おばあちゃんが亡くなって
数年後、ようやく復刊本を
見つけた「私」…。
(「さがしもの」)

その3
「蜘蛛の糸・杜子春」(芥川龍之介)

地獄を覗き見た釈迦は、
罪人の中にカンダタを見つける。
カンダタは悪党であったが、
過去に一度だけ善行らしきことを
成したことがあった。
小さな蜘蛛を
踏み殺しかけて止め、
命を助けたことである。
それを思い出した釈迦は…。
(「蜘蛛の糸」)

その4
「アンデルセン傑作集」(アンデルセン)

子どもが欲しくてたまらない女性が、
魔法使いの言葉通りに
大麦の種を植えると、
その花の中から「親指姫」が現れる。
ある日、姫が眠っていると、
ヒキガエルが
自分の息子の嫁にしようと
彼女をさらってしまう…。
(「親指姫」)

その5
「海に住む少女」(シュペルヴィエル)

海に浮かぶ街に
たった一人で住む少女。
彼女は自分以外の女の子が
この世にいることも知らずに
生きていた。
そしてその街は
船が近づくと海底に沈み、
誰の目にも
ふれることがなかった。
波は彼女のために
何かしてあげようと思い…。
(「海に住む少女」)

その6
「パパの電話を待ちながら」(ロダーリ)

ある若いエビが、
仲間が全員後ろ向きに
歩くことに疑問を覚え、
前に向かって歩きたいと願う。
練習のかいがあり、若いエビは
前に歩けるようになる。
しかし、それを知った家族は
彼を勘当する。
彼は胸をはって
外界へと飛び出す…。
(「進め!若エビ」)

その7:
「1ドルの価値/賢者の贈り物 他」
(O.ヘンリー)

貧しい夫婦が
互いにクリスマスプレゼントを買う
お金を工面する。
妻は、夫が大切にしている
金の懐中時計の鎖を買うために
自慢の髪売り、
夫は、妻が欲しがっていた
鼈甲の櫛を買うために
自慢の懐中時計を
質に入れていた…。
(「賢者の贈り物」)

その8
「月を見つけたチャウラ」
(ピランデッロ)

命令に従わない採掘工に
激怒した現場監督は、
逃げ出し遅れたスカルダ爺さんに
八つ当たりし、
徹夜の残業を命じる。
スカルダ爺さんはさらに
見習い工・チャウラに鬱憤を晴らす。
チャウラは夜の坑道の作業に
恐怖を感じていた…。
(「月を見つけたチャウラ」)

1はSFショート・ショート。
2は現代作家。
3は明治生まれの日本の文豪。
4は誰もが知っている童話作家
5はウルグアイ生まれのフランス人。
6はイタリアの児童文学者。
7はアメリカのの短篇の名手。
8はイタリアのノーベル賞作家。
日本にも海外にも古典にも現代文学にも
まだまだ面白い短編小説は
ごまんとあります。
凝縮された
文学の宇宙としての短篇小説、
いかがでしょうか。

(2020.7.31)

ArtTowerによるPixabayからの画像

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